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金魚の引きこもり

 

赤出目金のツネ子が、このところすっかり引きこもりになってしまった。濾過機のポンプ管の蔭にほぼ終日隠れるようにしている。

 我が家の水槽で‘ ツネ子 ’といえば、代々の赤出目金が襲名する名跡であって、パリ・オペラ座でいえばエトワール、宝塚ならトップスター、歌舞伎なら中村歌右衛門にもあたる伝統と格式ある花形であるはずなのだ。 ☞

 

 しかるに引きこもりとは…。

 原因はどうやら黒出目金だった正治がカミングアウトして赤出目金になり名前も雅代(正代はやめたようだ)に変えてしまったせいらしい。

 正治改め雅代は今や完璧な赤出目金に変身してしまっていて、スタイルも色つやも鰭のひらひらぐあいも明らかにツネ子を凌駕する。ツネ子はどうやらあまり体も大きくならない体質らしいのだ。

 金魚が水草とか物陰に隠れるようになるのは、病気か死期が迫った時だったりする。だが、ツネ子はずうっとじっとしているわけではなく、時々チョロチョロっと出てくるかと思うと、雅代の姿を認めるや慌てて引っ込む。雅代が昼寝かなにかで底の方で静かにしているときには、ひょいひょい泳ぎ回ったりしている。金魚どうしのイジメというのもまま見られることだが、雅代がツネ子を追い回したりという様子はない。ツネ子の一方的なコンプレックスで、自分より華のある雅代を見て僻むとともにアイデンティティを見失い、どうせあたしなんか、といじけてしまったということか。困ったものである。どうしたものじゃろうかのう。


            完璧な赤出目金に変身した正治⇒雅代

 

 

 

初代ツネ子

2001年ごろ

 

彼女は立派な花形スターだったなあ…。