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きもの KIMONO 展

 

 国立博物館の「きもの KIMONO」展に。

 もともと4月開催のはずだったのが、延期になって無事おとといからスタート。

 あらかじめネットで日時指定、クレジット等で事前決済が必要。これではIT難民はアウトですなあ。

 でも、お陰で、“2メートル間隔を”なんてのは無理でも、人の肩越し・頭越し・爪先立ちの苦行はなし。これはけっこういいかも。 ☞

 

 内容も充実。

 とりわけ江戸期が見事だけれど、やむをえないが着物は広げた状態で展示される。

 できれば着た状態を見たいものだ。まあ、国宝、重文級のものもあるのだから、無理は承知だが…。

 例えば寛文期(師宣の見返り美人の頃ですね)の遊女などは、“裄丈の短い小袖を着、…驚くほど裾を長く引いて着たという。帯は…腰骨のあたりに押し下げて結んだ。(「日本の女性風俗史」紫紅社文庫)”のだ。

 たしかに、この頃の風俗画でもそんな感じだ。マネキンに着せるのは無理でも、今だったらコンピュータグラフィックでなんとかならないかねえ。

 

 

 友禅染に絞り、刺繍、摺箔の縮緬の振袖。

 婚礼衣装らしいが、しかしこの見事なデザインは着るとどうなるのか。

 肩から袖にかけてのラインは、こんなにきれいに出ないだろうし、またこの頃(18世紀)なら帯も広くなっていて、当然に腰上げもするはず。

 こういう着物はひょっとして着るよりむしろ飾るためのものだったのだろうか?

 

 などといいながら、人形づくりとしては明治以降のものにより関心がある。

 たしかに目を見張るようなものもあるが、故池田重子さんの「日本のおしゃれ」展を見てきた眼からすると、まだあるだろう!という気持ちも抑えられない。

 池田さんや田中翼さんのような昔着物商、銘仙ならコレクターのマリンバ奏者・通崎睦美さんみたいな人に協力を求めれば、より充実したものになったんじゃなかろうか。

 (唐突ですがこれは手持ちの銘仙。大したものじゃないけど ―。かつては人形でこんなのを使ったことも…。  ☛ にへ)

 それから、現代作家のものなら、志村ふくみさんの草木染めの紬なんかもあったらよかったなあ。そんなこといってたら、きりがないけど。

 (蛇足ですが… X JAPANのYOSHIKIがデザインしたというきもののファッションショーのビデオが流れていたが、モデルたちの歩き方が変。洋装ならいいのだろうが、みんな体を揺すりながら歩くせいか、逆に首から上がひょこひょこと左右にスライドする。あれは絶対におかしい!改善されたい !!)

 

 ということで、3時に入館してさっさと見て5時以降の通勤帰宅ラッシュにあわないように帰ろうと思っていたのに(90分くらいで見終わってくれとアナウンスされていたけど)、けっきょく閉館の6時ちかくまでうろうろしてしまった。

 ま、あれこれいうけど、見ごたえありました。

 

 (国博名物のユリノキ。いい木ですねえ…。)

 

 なので諦めて食事して帰ることに。

 

 もうン十年前に時々入った蓬莱屋。

 ひょっとしてもうなくなっているのでは…と心配したけど、むかしどおりの店構え。

 カウンターは間を広げて6席だけ。先客が3人。(あとから2人組と3人組が来て小上りと2階に通されていた。)

 メニューも相変わらずヒレカツくらいしかない。当然、それを。ヱビスビールを飲みながら食す。これにまさるヒレカツは存在しえないことを確信。味噌汁がそばちょこで出てくるのも以前と同じだ。具にいんげんが二切れだけはいっているのも(前はさやえんどうがふたつだったかな…)。

 店を出る時はカウンターに客はいなくなっていた。この松坂屋の周辺も野蛮な再開発がすすんでいるけど、変な再開発ビルなんぞに呑み込まれないでほしいものだ。…なんだか、永井荷風みたいな気分になってきたぞ。

 

 混みそうなJRは避けて、京成の鈍行でとろとろと帰路につく。