益田ミリのエッセイで深大寺が蕎麦屋のメッカであることを知る。なんとなく耳にしていたような気はするけれど、20店ほども軒を連ねているという。
さらに、ユニークなケヤキの巨樹もあり、またすぐ近くに露天風呂のある日帰り温泉もあるというではないか。蕎麦に巨樹に温泉、出来すぎのような究極の三拍子!これは探訪しないわけにはいくまい。 ☞
広大な境内には整備された庭園や野趣あふれる自然が。澁澤龍彦が奥州の寺で夢中でその実を集めたというムクロジの木も(堅い黒い実は羽子板の追い羽の玉に使われていた。)
蕎麦屋は門前にも境内にも。境内を奥に上った「玉乃屋」に。店内は昼前なのに満席。でもまさに小春日和の好天で屋外の席が快適だ。
おでん、つまみ山菜に“深大寺ビール”(≧▽≦) 蕎麦は十割の太打ち田舎。う~ん、期待ほどではないな。ま、中の上ってところかな…。
境内を下って青渭神社に。
傾いて鉄柱に支えられたケヤキの巨樹。幹周(目通り)5.5m、樹高34m、樹齢500~700年?こりゃ支えられてなければ倒れるな。
中ほどにハート型の派手なウロ。なんとも奇怪な面相だ。
神社の境内にはほかにもちょっとした巨木が。
夕方前にもう一軒蕎麦屋に行く腹づもりなので、しばし散策。
水生植物園。外れの広々とした原にはムラサキシロガネヨシという巨大な群生。ほれぼれとする姿のよいエノキの大樹。
都立の植物公園。大方の花の時季は外れているけれど、広々とした園内にさまざまなな樹が林立していて気持ちいい。
モミジバフウという馴染みのない樹。葉の形がモミジだ。
1時間ほど歩いて一周し終えるあたりでちょうど花ざかりのダリア園が現れる。それぞれの品種に‘風の調べ’とか‘恋の予感’などのネーミングが。なかには単にまだ‘作出番号17-164’などとされているものも。
調布は水木しげるが住んでいた町なんだとか。
ただ一店 夕刻まで営業するはずの蕎麦屋は、なんと臨時休業。(明後日の祝日の振り替えだと。)
早めの夕餉の蕎麦は諦めて、日帰り温泉「湯守の里」に。深大寺から住宅街を抜けて5分ほど。遠来の客だけでなく、自転車で来る地元の人なども。
ここの湯は“1500メートルの地下から汲み上げられる”“数万年前の海水に有機物が溶け込んだ「化石温泉」(ナトリウム塩化物炭酸水素温泉)”で“フミン酸がたっぷりと含まれた黒湯”なんだとか。墨汁を溶かしたようで湯の中の自分の体も見えない。
露天風呂にはまだ夕刻前の陽差しが。蕎麦のあてが外れたのが却ってよかった。気持ちのいい湯。気持ちのいい午後。
帰りはリムジンバスで武蔵境駅まで送ってくれる。
深大寺での夕餉の蕎麦にはありつけなかったが、やはり蕎麦で締めたい。
新宿で途中下車。東口すぐの「大庵」に。二階から往来の人が見おろせるカウンター席に。
天ぷら盛合わせ、緑のサラダ(これは平凡)、穴子の八幡巻(これは旨い!)、ビール、‘惣誉’という栃木の聞きなれないけどすっきりした上々の酒。
〆めに田舎せいろ。十割ではないようだが、香りもコシもたいへんけっこう。満足でした。
いい一日だったなあ…。