絶版になっていて、古書にも出てこないか、あってもべらぼうな値が付いている本 ― それをどうしても見たければ国会図書館に行くしかない。 館外への貸し出しはしないが、ここには国内でのすべての出版物が収められていることになっている。
というわけで、永田町、国会前の国会図書館へ。名称は物々しいが、なに、思いのほかハードルは高くない。 ☞
まず利用者登録してICカードを発行してもらう。入館、そして諸々のサービス利用はこのカードを用いて各席に設置された端末からログインして申し込む。
閉架式で書庫が視界にないので、館内は広々。職員にも余裕がありそうだ。マニュアルを読むのが面倒なので、ログインの仕方を尋ねると、端末まで来てていねいに教えてくれる。
見たい本を検索して申し込めば、ものの10分くらいで、端末に“届きました”というメッセージがきてカウンターで受け取る。
この本のコピーも端末から頼める。ページを指定して送信し、カウンターに持って行く。100枚近くになるのに、20分くらいで“できあがりました”というメッセージが届く。この業務は日本キリスト教奉仕団の障がい者が受託しているそうだ。すごくスムーズで丁寧。
(ただしコピーは著作権法上 全ベージの半分までしかできない。)
実物は出さないけれどデジタル化されているものもあって、これも端末から指定して出力してもらえる。送信してすぐカウンターに。その前に座って待っているうちに50枚余が刷りあがってくる。
手作業のコピーの単価は25円、デジタル出力は16円。これは楽ちんだ。
デジタル出力してもらったのは、葛原妙子全集(短歌新聞社版)のなかの第一歌集「橙黄」と死後にまとめられた第九歌集「をがたま」。(その後出版された砂子屋書房版の全集は収納されていなかった!)
葛原妙子は第一から第七歌集までを収録した三一書房版で(第八「鷹の井戸」は単行本で)持っているのだが、葛原は三一版に収録した際に「橙黄」の中身にかなり手を入れているのだ。後年作った新作が入っていたり、なんと目次自体がずいぶん違う。(友人の森岡貞香が“そんなのおかしい”と言っても葛原は頑として聞き入れなかったそうだ。)
というわけで、オリジナルの「橙黄」を求めた次第。わたくしが ‘おごり百人一首’で「橙黄」から引いた歌 ―
ふたつまなこ暗く死にたる父のゐて生けりし父のわが手に無し
もオリジナルにはない。「橙黄」のなかで出色だと思ったのだけれど、やはりこれは第五歌集「原牛」以降の作風だよなあ。
国会図書館のもう一つの目的(こっちがメイン?)は、松田梨子・わこ姉妹(と両親)の第一歌集「たんかでさんぽ」と第二歌集「リコピンがある」。
小学生からはたち過ぎの今日まで朝日歌壇などにほぼ毎月のように入選し続けている姉妹の歌集。
今年第三歌集「ソナタを弾こう」が出たのだが、以前のものは古書でも入手できない。しかし子どもの頃のが実にいいのだな。こざかしさのない生き生きとしたセンスとリズム感。
五・七・五くつで数えて立ち止まるママとこのごろたん歌でさん歩 梨子(8歳)
しゃぼん玉近づくように笑い合う「モモって呼んで」「リコって呼んで」 梨子(13歳)
くるりんとおおきなめをしたしかたちがわたしをみてるわたしもみてる わこ(5歳)
ママが差す日傘の影にぴょんと入りそのまま影絵見ながら歩く わこ(10歳)
松田姉妹についてはあらためて ―。
しかし、葛原妙子と松田姉妹って…。すごい組み合わせだなあ…。