「横浜人形の家」展示更新手続の後、神谷町に。
ホテルオークラ内の大倉集古館で志村ふくみ100歳記念回顧展が催されているのだ。
野趣の窮みの洗練。「野の果て」と題された着物はなんと令和5年の作。紫根・紅花・春草で染められグラデーションをなす繊細極まりない紬。“命を頂く”とか“恩寵”というのが素直に腑に落ちる。つい、溜息が出る…。 ☞
晩食までの時間をつぶすため、この街を散策。神谷町はあまり馴染みのなかった街だ。
大使館。アメリカ、イタリヤ、スペイン…。派手な赤いフェンスはスウェーデン。
愛宕神社。日が暮れ始めても初詣の参拝客が並ぶ。八幡神社にも。起伏の大きな街。東京タワーがいつの間にかライトアップされている。
穴子専門店があるというので、そこに狙いを定める。その名も「穴子や」。穴子はわたくしの大好物。天ぷらで海老か穴子かと問われれば迷うことなく穴子だ。
店構えはイタリアンっぽい。おや、テラス席まであるぞ。
開店早々に入ったので(なにせ昼飯を摂っていなかったのだ)、他に客はいない。でも、そあとも店を出る間際に若いカップルが1組来ただけだったな。予約の電話は頻繁に掛ってくるようだったが。はて?
ホップの代りに山椒を使った(?!)という‘ジャパニーズハーブエール山椒’。これはいい。エールビールらしいすっきり爽やかな香り。
穴子の刺身。湯引きしたものなら‘まさひろ’で出されたことがあったけど…。締まった歯ごたえにコクがあって食べ飽きがしない。さすが‘穴子や’❢ 対馬の産だという。江戸前の穴子は独特のクセがあるが、これはとても上品な味だ。
メニューに‘ピリ辛キャベツ’とあったのに、今日は切らしているという。えーっ、他に野菜はないのかぁ…とぼやいたら、厨房と相談したらしく、しばらくして、コースで出すものですがイカ墨で大根を炊いたものなら…、といって出してくれる。イカ墨が和風になるなんてなかなか乙だ。
酒は‘穴子や’と名付けられたオリジナル。その名に恥じぬ料理にぴったりの辛口純米大吟醸。
天ぷら。サクサク、フワフワ。藻塩で食す。天つゆなどに浸してしまうのは愚というほかないと思わせる揚げ具合。
〆めの穴子丼。煮穴子を軽く炙っている。煮穴子というのはタレが甘ったるくて閉口することが多々あるけど、これは文句なしの塩梅。とろけるように柔らかな穴子。
この店はいいね。機会があれば、是非また訪れたいものだ。