余計なお世話?

 

   カミ技? カミヤスリは紙なのだ

 

 紙ヤスリは紙に研磨剤を接着させたものである。

 ―ということをわざわざ言うのは、すなわち紙ヤスリも紙の性質を持っているということを言いたいからだ。

 

 では、紙の性質、とは―

 

 

 紙には縦目と横目がある。

 紙は細かいパルプ(繊維)からできていて、これは小川を同じ方向に泳ぐメダカのように一定の方向に並んでいる。

 メダカが泳ぐ方向を‘縦目’、これを横切る方向を‘横目’という。

 

 ティッシュペーパーのような紙にも、この縦目・横目はあって(カレンダー印刷などに使われる‘アート紙’は別)、縦目方向にはきれいに裂けるのに、横目方向は破れにくい。

 

 

 トイレットペーパーだって―。

 (この使い分けを過ると悲惨なことに…?!)

 

 さらに顕著なのは、縦目は曲げようとしても突っ張るのに、横目はしなやかにしなる。

 上が縦目、下が横目。

(余談 ― この使い分けは製本の際に肝要で、開く方向に縦目の用紙を使うと、指を弾きひどく扱いにくい本になってしまう。近頃、名の通った出版社にもそんな本が散見されて情けないかぎりだ。)

 この違いを、原型やグリーンウェアの整形の際に使い分ける。

 

 しなやかな横目は滑らかな曲面を出したいときに使う。


 指の‘馬の背’は、あんがい磨きにくい。この形にして接する部分に緩いカーブをつける。

 指で摘んだところをスライドさせると角度をつけられる。


 

 狭くて入りにくいところは縦目を使う。反りをつけて縦方向に使えば、そこそこの強度を出せる。


 基材が布のものもある。

 

 

 

 横糸方向の横目を使えば、紙ヤスリよりさらにしなやか。

 

 

くるくると丸めると、でこぼこのないしなやかな筒状になる。

 

 斜めの螺旋状に巻けば、奥まったところや窪んだ部分を磨くのに最適。


 縦・横のこだわりとは別に、こんな使い方もよろしいのでは―。

 

 細く帯状にしたのを正三角形に折って、摩耗したら次々に同じように折っていく。細かい部分を磨くのによい。

 

 ちぎると、手前に引いた方の表側が残って薄くなる。デリケートに磨きたい部分に使う。

回り込んで彫刻刀などでも届かないところは、細く切ったアルミ板の先端をカーブさせ、両面テープで紙ヤスリを貼って用いる。(複雑な形の指くらいですかね、使い途は。)


 ★

 紙ヤスリにもいろいろなタイプが―。

 

 

 もっとも一般的なもの。

 

 耐水性として売られているもの。基材の紙が堅いので、縦目を生かしたいときに使う。

 

 布の基材。横目を生かしたいときに。

 (ついでながら、縦目・横目の見分けは容易で、写真のように少し丸まっていたり、そうでなければ、容易に丸めやすい方向が横目、かたくなに丸まろうとしないのが縦目。)

 

 目詰まりしにくい‘空研ぎ研磨紙’。かなり長持ちするので、とても使い勝手がよい。

 三共理化学製で、研磨剤が溶融アルミナ(AA)と、炭化珪素(CC)とがあるが、AAタイプが強力でお勧め。

 しかし、スポンジに紙ヤスリを貼り付けたやつ。あんな使い勝手の最悪なのがどうして使われているんですかね…?