天使の臀 夏の葉むらに恥ぢらひてあわだつほどのまひるまの夢
渡る風 風の泡立ちつつみかねうすき午睡の呟きとなる
角折れし少年の影消え失せぬ のうぜんかづら狂ひ咲きけり
雨後のあさがほ事後のあさがほくたびれてわかものがあいする少年の午後
うたゝ寝のまだ覚めやらぬ午後の陽を眩しき空と鳥はよこ切る
さわたりてまだきも倦めるうたかるた夢にもたはしき日々は来よまた
水喰めば六腑にひびく暮々の厨の闇に梨沈みをる
族絶ゆつむれば赫き眼裏にこの世のほかの桜咲くらん
うたた寝ののちの懶さよ夏木立
かたつむりこの世にひとりこぼれ来ぬ
酔芙蓉たれたづねゆく夕まぐれ
酔芙蓉逢魔が刻に溶けゆけり
誰が夢かのうぜんかづら狂ひ咲く
破れカンナ老嬢のごと佇ちゐたり
空蝉の踏みしだかれて風に散る
しぐるるや木々の眠りのあさき闇
さらぼひてうたゝ寝に聞く梅雨の入り
うたゝ寝に聞く雨音や蜘蛛の罠
天霽れてこの世あの世の彼岸花
水喰めば十一月の恋の果
さればよとそろり柚子湯にしづみをり
白髪にふる淡雪や夜の道